買いに行くだけじゃない、新たなレコードとの出会い方、エレクトロニック・ダンスミュージック専門レコードショップ COMPUFUNK RECORDS

大阪・北浜にあるCOMPUFUNK RECORDSは、エレクトロニック・ダンスミュージック専門のレコードショップであり、バーやクラブスペースとしても機能する、大阪の音楽シーンに欠かせないスポットです。 この記事を執筆した […]

この記事の内容

大阪・北浜にあるCOMPUFUNK RECORDSは、エレクトロニック・ダンスミュージック専門のレコードショップであり、バーやクラブスペースとしても機能する、大阪の音楽シーンに欠かせないスポットです。
この記事を執筆した理由は、COMPUFUNK RECORDSが単なるレコードショップにとどまらず、音楽を「購入する」だけでなく「体験する」場であり、さまざまなストーリーが詰まった一枚と出会える特別な場所だからです。これからレコードに触れる方にも、またレコードを求めて大阪を訪れる県外の方にも、ぜひ足を運んでいただきたいスポットです。

移転前、アメリカ村の地下にあった店舗はアンダーグラウンド感が魅力的でしたが、現在の北浜のロケーションでは、川沿いの開放的な景色とスタイリッシュな空間が見事に調和し、新たな魅力を放っていました。
今回は、オーナーでありDJ、トラックメーカー、プロデューサーでもあるNAOさんへのインタビューを通じて、その独自の魅力をご紹介します。

 

ダンスミュージックの沼に引き込まれたNAOさんの原体験とは

ダンスミュージックとの出会いはどのようなものでしたか?

NAO90年代初頭にロンドンを訪れたことがきっかけです。当時、神戸のライブハウス「チキンジョージ」でアルバイトをしていた際、店長から「イギリスでセカンド・サマー・オブ・ラブっていうアシッドハウスのムーブメントが盛り上がっているから見てこい」と勧められ、実際にロンドンへ向かいました。
少しピークは過ぎていたものの、ハウス、テクノ、ジャングルやレイブシーンが盛り上がっており、非常に刺激的でした。それ以降、店をオープンするまで年
12回の頻度でロンドンを訪れ、ロンドンのダンスミュージック・シーンに深くのめり込むようになりました。
やはり、現地でDJのサウンドを大音量で直接体験できたのは、すごく大きかったように思います。

当時のロンドンのダンスミュージックシーンって、どんな感じだったんですか?

NAO:ロンドンで特に影響を受けたのは3つのパーティーです。
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つ目は「Rage」で、1990年から1993年頃にFABIO & GROOVERIDERが主催していたイベントです。これはジャングルの発祥と言われる伝説的なパーティーで、僕が最も影響を受けたパーティの一つですね。実は、1993年に当時の相棒のDJ Dogと自主制作でCOVE01”というジャングルのホワイト盤を作ったのですが、それが日本初のジャングルの作品と言われています。
2つ目は「Knowledge」。Colin FavorColin DaleというテクノDJが主催するイベントで、当時イギリスのアンダーグラウンドテクノシーンを代表するイベントでした。
3つ目は、Steve Bicknellが主宰していた「LOST」というイベントです。ここではデトロイトテクノのアーティストをゲストに呼んでいて、Jeff Millsのプレイを初めて体験したのもこのイベントでした。

ロンドンでの経験がDJ活動に繋がったんですね。

NAO:そうですね、最初はロンドンでレコードを買って、友人同士で家でかけて楽しむのが中心でした。そこから、チキンジョージの閉店後にシークレット・パーティーをしたり、クラブの名前は忘れたのですが、チキンジョージの店長がオーガナイズをしていた“Texas”というパーティーでDJをするようになりました。このパーティーはアンダーグラウンドで当時かなり盛り上がっていました。ロンドンでの経験、特にジャングルやUKのテクノ、デトロイトテクノから影響を受けたのは間違いないですね。

 

COMPUFUNK RECORDSが、レコードを買うだけではない体験型の空間になるまで

COMPUFUNK RECORDSを始めたきっかけは?

NAO:当時、日本には入ってきていなかった、ロンドンのダンスミュージックのカルチャーを持ち込みたいと思ったのがきっかけです。
ロンドンには「
Unity」や「Blackmarket」「Fatcat」といった伝説的なレコードショップがありました。店員がDJのように音楽をかけ、大音量の中でお客さんが『この曲をくれ』『これちょうだい』と盛り上がる姿がとても印象的でした。その光景を見て、自分もそんな場所を作りたいと思いました。現地に住んでいた友人のDJ “Hero U.D.A”にレコードを送ってもらうところから始め、1996年、大阪のアメリカ村でコンピューファンク レコーズをオープンしました。

レコード販売のエリア

廊下部分、floorがその奥に

バーやフロアは、1996年のオープン当初からあったのですか?

NAO:いえ、当初はレコードの販売のみでした。
やはりロンドンで経験した原体験が忘れられず、ダンスミュージックの良さをしっかり肌で感じられる、クラブのようなことをやりたいと思っていた中、同じフロアのテナントさんが全て出て行ったタイミングがあって、壁をぶち抜いて、一からフロアとバーカウンターを作りました。それが2008年頃で、現在のコンピューファンク レコーズの基本的なスタイルが出来ました。
その後、ビルが老朽化により立ち退きが必要となったため、2017年に北浜へ移転しました。

2017年当時、オフィス街の北浜に移転すると聞き驚きました。

NAO:街中や特にアメ村では音を出せる物件を見つけるのが非常に難しかったんです。それでエリアを広げて探していたところ、当時のビルのオーナーの紹介でこの場所に出会いました。川沿いで景色も良いし、何より音が出せる環境というのが決め手でした。

エリアが変わったことで、お客さんの違いはありますか?

NAO:間口が広がった印象です。今の店舗は2階にあって窓もあり、川沿いの景色も楽しめる開放的な空間なのでより多様なお客さんが訪れるようになりました。
最近は「レコードバー」というカルチャー浸透している影響もあって、テクノやハウス以外の音楽好きの方や、クラブやレコードを買うのが目的ではなく、レコードを楽しみたい方や、バーで一杯飲みながら音楽を聴きたいという方も増えましたね。
そうした中で、レコードを買い始めたり、クラブイベントに足を運ぶようになったり、音楽の新たな楽しみ方を見つけてくれるお客さんがいることが、とても嬉しいですね。

音へのこだわりと独自の取り組み

音響環境にはこだわりがありますか?

NAO特に高価なスピーカーやアンプを使用してませんが、200vの電源を敷いたり、ハウリングを抑えたりルームアコースティックを意識した音作りをしています。コンクリートだと反響するので、踊りやすさもあるのですが、床はウッドにしていたりします。
方向性としては、不快な部分を減らすことを意識しています。例えば、高音がきつく耳に痛い部分はなるべく抑え、特に大音量のクラブイベントでも長時間フロアにいられるような空間作りを心がけています。

レコードを制作できるサービスも行っているんですよね?

NAO:一般に販売されているレコードと作り方は違うのですが、AUTORA FACTORY PLATEというダブ・プレート(Dubplate)を作れるスタジオも併設しています。
音楽データを
1枚からレコードにできます。Catchpulseというクリエイターがドイツで講習を受けカッティングマシーンを購入し、彼がエンジニアとして、アメ村時代に店舗に併設したスペースでスタートしました。素材が塩化ビニールを使用しているので、プレスされたレコードと同じ耐久性があります。

カッティングマシン、レコードプレスとは異なり、1枚ずつ手作業で音を刻みます。
加工前の塩化ビニール盤

大阪のダンスミュージックシーンについて

長年、大阪のダンスミュージックのシーンを見てきたNAOさんにとって、印象的な出来事はありますか?

NAO:数多くあり、すべてを語れないですが、2024年12月に惜しまれつつもクローズした味園ビルの地下にあったクラブ「マカオ」で始まった「FLOWER OF LIFE」というPartyもすごかったですね。VJユニットBetaLand2002年頃に始めた大阪を代表するクラブカルチャーの一つでした。

東京のシーンや、ハードコアのシーンも混ざりあった伝説的なイベントですよね、味園ビル内には鶴の間というクラブもありましたね

NAO:「鶴の間」もシーンにおいて重要な場所でした。ここでは「Sound Channel」というレーベルが活動しており、2006年にはその2周年を記念してリリースしたEPUNITED UNDERGROUND 鶴の間 2ND ANNIVERSARY E.P」に.僕もLovegod名義で参加しました。
90年代後半から2000年頃には「I to I」というクラブがURUnderground Resistance)やCarl Craig, Robert Hood,Colin Daleなどを呼んでパーティーを行っており、自分もDJとして参加しました
I to I」は元々レゲエシーンで有名なclubで、そこのサウンド・システム KILLASAN Sound System”は、現在ベルリンのレコードショップ「Hard Wax」のイベント「Wax Treatment」で使用されていると聞きました。
神戸Underground Galleryというレコード・ショップ & バー、レーベルも2000年代にURやテクノ・オリジネーターJuan AtkinsのユニットModel 500など多くのデトロイト勢を招いて日本ツアーを行っており、自分もDJとしていくつかのPartyに参加しました。
URの連中が神戸に1ヶ月ほど滞在した時があり、その時に交流を深める事が出来たのも今に繋がってます。
あと、神戸ですが、第2突堤という埠頭でOpenKnuf!という野外のFree Partyをオーガナイズしていました。2000年代に毎年、年一回夏に行っていた野外レイヴで自分達でSound Systemを用意し最終的に大勢の人達が集まってくれました。これも良い思い出の一つです。

 

COMPUFUNK RECORDSならではのレコードの買い方とは

レコードのラインアップについて教えてください。

NAO:基本的にはハウス、テクノ、エレクトロやブレイクビーツ、アンビエントなどのエレクトロニック・ミュージックを中心にしていますが、トレンドに合わせて微妙に比率を変えたりしています。
海外でレーベルを運営している友人や、
CompufunkPlayしに来てくれたDJ / Producerからも直接仕入れたりもしています。レアな日本のレーベルのDead stockや自分たちで作ったオリジナルのトラックのダブ・プレートも販売してます。

この空間だからこそできる、レコードの買い方ってありそうですね

NAO:バーで飲みながら、気に入った曲をその場で購入できるというのも、コンピューファンクならではのレコードの買い方だと思います。リクエストをもらえればおすすめのレコードも紹介します。クラブイベントに来た流れで購入してくれるお客さんも多いですね。

店長NAOさんのおすすめレコード

おすすめのレコードを教えてください。

1. LOS HERMANOS/On Another Level (reissue)/Los Hermanos
URのコアメンバーであるGerald Mitchell率いるLOS HERMANOSによる、ソウルフルでスピリチュアルなデトロイト・テクノの名盤。CompufunkでもDJ +キーボードというスタイルで2回プレイして貰っています。

2. DJ GIZZARD_LNS_DJ SOTOFETT/スパッターズ日本ツアー/Wania
LNS + DJ Sotofett2024日本ツアー・スペシャル・リミテッド12インチDJ Sotofettの日本ツアーを当店で行った時に仕入れた限定盤。よく見るとジャケットにcompufunkの名前も

3. E.R.P./Faded Caprice/Apnea
CONVEXTION名義でも知られるE.R.Pdeep electro albumです。

4. REKAB/Random Fragments EP/Yore
UKのプロデューサーReKaB の新作。Andy Vaz主催のYore Recordsよりリリースされた12インチで、自分もDJ Compufunk名義で2022年にこのレーベルよりリリースしました。

5. DJ COMPUFUNK / A.I.Soul VER2.1/ Compufunk Dub
自分の未発表曲や過去作品をDubplateにして販売してます。実店舗のみで購入可能な限定盤です。

※店頭限定のため、ジャケット画像なし

国内で注目しているアーティスト

今、注目しているアーティストはいますか?

NAOはい、まず関西出身の「Hizuo」彼は20歳になったばかりで、自身のレーベルを立ち上げ、デジタルで楽曲をリリースしています。また、京都のStones Taro主催のレーベル「NC4K」からも楽曲を発表しています。

次に「Neo」というアーティストも20歳で、彼は中学3年の時にコンピュファンクでパソコンを使わずにハードウェアのみでライブを行いました。現在、アルバムを2枚リリースしています。

彼らは、僕からすると息子ほどの年齢ですが、かなりかっこいい音を作っていて、将来が楽しみなElectronic Dance Music新世代です。

Hizuo
https://soundcloud.com/hizuomusic

Neo
https://soundcloud.com/user-998251162

 

最後にNAOさんから

レコードを購入したい人はもちろん、レコードに興味がある方や音楽好きの方はカフェ、バーも併設してますのでお気軽にご来店下さい!

レーベル「Compufunk Records」も進めていく予定です。自分の曲や日本の若い世代の楽曲に加え、90年代から2000年代前半にリリースされた日本人アーティストの隠れたトラックなどを発表していく予定です。よろしくお願いいたします。

COMPUFUNK RECORDS
http://www.compufunk.com/

店舗詳細
https://recoya.net/ja/stores/compufunk-records/

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