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新栄で、針を落とすまでのドキドキをもう一度。 Devine Records(愛知県名古屋市)#15

レコ屋の店主の方へのインタビュー連載”レコ屋のヨモヤマ話”。

名古屋駅から地下鉄東山線に乗って、新栄町駅すぐのレコ屋「Devine Records(ディヴァインレコード)」。名古屋の大通りである広小路通に面した路面店です。

「レコードには、聴いたことのない音楽に針を落とすまでのドキドキ感があるんです」

と話す店主の兼松さん。子どもの頃に家で聴いたドーナツ盤、学生時代に通ったディスコやジャズ喫茶、古書店としての経験を経て、レコードの世界へ。今回は、兼松さんに、音楽との出会い、現在のお店づくり、そしてレコードを通して伝えたいことを聞きました。

ディヴァインレコード

ディヴァインレコード
愛知県名古屋市

Recoya

音楽やレコードに強く惹かれたきっかけを教えてください。

兼松さん

兼松さん

子どもの頃、家に小さなレコードプレーヤーがあったんです。あと母親と母親の妹が持っていたシングル盤がたくさんありました。いわゆるドーナツ盤ですね。

和製ポップスや、外国の曲を日本語でカバーしたものがあって、子どもの頃から片っ端から聴いていました。

僕にとってレコードの一番の魅力は、聴いたことのない曲をプレーヤーに乗せて、針を落とすまでのドキドキ感なんです。プチプチ…とか、シュワシュワ…とか、そういう音も含めてレコードなんですよね。逆に、あまりにきれいすぎると違和感があるくらいです。

レコードって、知らない曲、知らないアーティスト、知らないジャンルに出会えるメディアだと思うんです。小学生の頃から、いまにいたるまで、レコードに対するそういった感覚はずっと変わっていません。

Recoya

学生時代は、どのように音楽に触れていたのでしょうか。

中学生くらいになると、近所の友人からロックを教えてもらうようになりました。僕は一人っ子だったので、同級生の中にはお兄さんやお姉さんがいて、レッド・ツェッペリンやディープ・パープルのレコードをカセットに録音してもらったりしていました。そこで聴くハードロックの音の迫力がすごくて。

高校の学祭では同級生とバンドを組んでいました。当時はタブ譜が簡単に手に入る時代ではなかったので、レコードを何度も聴いて、ギターソロやリフを耳で覚えていましたね。

また家の近くにレコ屋さんがあって、買わなくてもほぼ毎日のように行っていました。店内に貼ってあるポスターや、流れている音楽が気になるんです。当時、新しい音楽を知る手段は、僕にとってはラジオか、レコ屋か、ディスコくらいでした。

土曜日は学校が昼まであったので、帰ってきたらラジオで洋楽のランキング番組を聴いて、ウエストコーストの音楽や女性ボーカルを知りました。

あと当時のディスコは昼から夕方まで、中高生が入れる時間帯があったんです。アルコールは出ないけど、ドリンクや食べ物があって、私たちにとっては音楽を聴けるたまり場みたいな場所でした。

ディスコの近くには輸入レコードを扱う中古レコ屋があったんです。中に入った瞬間、雰囲気がもうアメリカみたいで。流れている音楽、レコードの匂い、全部が新しかった。そこで500円くらいのレコードを1枚買って帰る。それがすごく楽しかったですね。

Recoya

大学時代には演劇にも取り組まれています。

大学では演劇部に入りました。舞台俳優にも興味があったし、脚本も書いていました。演劇をやっていたことで、本を読むようにもなりましたし、クラシックに詳しい先輩の影響でクラシック音楽やジャズも聴くようになりました。

大学の授業が午前中で終わる日は、名古屋の中心街に出て、昼からやっているジャズ喫茶へ。コーヒー一杯で2時間、3時間とジャズを聴く。今思うと、すごく自由な時間でした。

そうやって、ロック、ディスコ、ソウル、ユーロビート、クラシック、ジャズと、いろいろな音楽を聴いてきました。でも、どれだけ違うことをしていても、レコードから離れる人生ではなかったですね。

Recoya

社会人になってからは、どのような道を歩まれたのでしょうか。

4年ほど会社に勤めたあと、29歳のときに独立して、古書店として始めました。本だけでなく、レコードやCDも扱う複合店のような形で、15年ほど続けました。そのあと別の仕事もしたんですが、どこかでレコ屋をやりたい気持ちはずっとありました。

新栄には思い入れがあったんです。大学生の頃によく来ていた場所で、もしレコ屋をやるなら、このあたりがいいなと思っていました。

そんな時、今の場所が空くという話を聞いて。大通り沿いの路面店で、しかも1階。名古屋の中心部で、こういう場所に出会えることはなかなかない。すぐに開店できる状態ではなかったんですが、どうしても手放したくなくて、思い切って決めました。

Recoya

名古屋の大通り・広小路通に面した路面店ならではの特徴はありますか?

敷居の高い店にはしたくないんです。路面店という特徴なのか、レコードを買うつもりがない方もたくさん入ってきます。近くの喫茶店や飲食店に来た帰りに、カップルでふらっと入ってきて、『レコードってこんなにあるんだ』と驚いてくれる若い人たちもいます。

そういう人たちに、レコ屋ってこういう感じなんだなと知ってもらえたらうれしいです。買うためだけの場所ではなくて、まずは雰囲気を感じてもらう場所でもいいと思っています。

あと基本的に、こちらからはあまり声をかけることはしていないんです。『いらっしゃいませ』『何をお探しですか』とすぐに言われると、プレッシャーになる人もいると思うんです。買う目的ではなく、ウィンドウショッピングのように見に来る人もいますから。それは路面店だからこその接客かもしれません。

100%の人がレコードを買いに来るわけではない。レコ屋があるけど、どんなところなんだろう。ちょっと見てみたい。そういう人もいます。だから、まずは自由に見てもらいたいんです。欲しいものがあれば買ってもらえればいいし、雰囲気だけ楽しんでもらってもいい。気楽に時間が空いたときに入って、棚を見て帰るだけでもいいと思っています。

もちろん、お客様から『こういうジャンルを探している』『これはどういう曲ですか』と声をかけてもらえれば、対応しています。でも、最初からこちらが前に出すぎると、せっかくの自由な時間を邪魔してしまう気がするんです。

Recoya

店内の見せ方で意識していることはありますか。

値札やプライスカードは、手書きではなくパソコンで打ち出しています。年配のお客様もいらっしゃるので、文字や金額はなるべく大きくしています。

レコ屋に慣れている人だけではなく、初めて入る人にもわかりやすいようにしたいんです。小さなことかもしれませんが、そういう見やすさも入りやすさにつながると思っています。

あと店内では、オールディーズが流れている時間が多いですね。自分がワクワクする音楽なんです。子どもの頃によく聞いていて、メロディーが美しくて、軽やかで、誰でも楽しくなれる。曲の長さも2分半くらいでちょうどいい。オールディーズって、人の暗い内面を深く描くというより、みんなが楽しくなれる音楽が多いと思うんです。店内で流していると、若いお客様が『この曲かわいい』と言ってくれることもあります。ジャケットを見て『この顔、かわいい』と言う人もいますね。

そういう反応を見るのも面白いんです。詳しい知識があるかどうかではなく、まず何かを感じること。そこから音楽に入っていくのも、とても自然なことだと思います。

Recoya

これから、ディヴァインレコードをどんな場所にしていきたいですか。

今は、スマホですぐに音楽が聴けますし、流行っているものもすぐにわかります。もちろん、時代のメインストリームの中にも本当にいいものはあります。

でも、みんなが聴いているから自分も聴く、というだけではなくて、『私はこれを聴く』という感覚も持ってほしいんです。自分が本当に好きなものは何なのかを、ゆっくりした時間の流れの中で考えてもらえたらいいなと思います。

レコードは、そういう聴き方に向いていると思うんです。ジャケットを見て、盤を取り出して、針を落として、音が鳴るまで待つ。その時間も含めて音楽ですから。

最初にピンとこないことがあっても、何度も聴くうちに良さが見えてくることもあります。好きなアーティストを見つけるのも、すぐじゃなくていい。何年かかってもいいと思うんです。

古いレコードでも、自分にとって初めてなら新しい音楽です。誰も聴いていないもの、誰もまだ見つけていないものを見つけられたら、その瞬間は、世の中で自分が一番最初にその音楽を見つけたような気持ちになれる。

ディヴァインレコードでは、そういう“古くて新しい音楽”に出会ってもらえたらうれしいですね。

ディヴァインレコード

ディヴァインレコード
愛知県名古屋市

Recoya VIEW

「針を落とすまでのドキドキ感」という言葉が、兼松さんのお店づくりをよく表しているように感じました。レコードを“知っている人だけのもの”にせず、まだ知らない人にも開いていく。その姿勢が、路面店ならではの入りやすさにもつながっています。

こちらから積極的に声をかけすぎず、まずは自由に棚を見てもらう。買うためだけではなく、レコ屋の空気を感じてもらう。そうした距離感には、初めてレコ屋に入る人へのやさしさがあります。

流行っている音楽を追うだけではなく、「私はこれを聴く」と思える音楽に出会うこと。ディヴァインレコードは、そんな“自分だけの音楽”を、ゆっくり見つけられる場所なのかもしれません。

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Recoya運営チーム
「Recoya」の公式運営チーム。レコ屋を知るきっかけを増やし、人と店、人と街がつなげることを目指しています。

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