「音楽と遊ぶ」体験を、共につくる会員制レコードクラブ good record club

VINYL ME, PLEASE(VMP)などの海外サイトが火付け役となり、『レコードのサブスク』が新しい音楽との出会い方として世界的に人気を集めています。今回は、日本でレコードサブスクリプションサービスを展開する「good record club(grc)」の代表、柴田さんに焦点を当て、このサービスがどのようにして誕生したのかを探ります。grcが提供する新しい音楽体験の世界に、ぜひ足を踏み入れてみてください。

この記事の内容

柴田さんの経歴について

柴田さんは幼い頃から音楽に触れていたんですか?

柴田 福岡の片田舎出身で、中学時代からストリートダンスを始め、ダンスには欠かせない音楽は常に自分の生活の一部でした。大学で上京し、学内のダンスサークルでの活動を中心に、よりダンスと音楽に没頭し、DJも嗜みはじめました。大学時代にアムステルダムへの交換留学も経験し、欧州のダンスカルチャー、クラブカルチャーでの交流を通じて、異なるバックグラウンドを超えて音楽愛でつながるような、ダンスミュージックの真髄にも触れた気がします。

 

ダンスを通じて音楽の楽しさや情熱を深めていったんですね、その後のキャリアについて教えてください。

柴田 大学卒業後は海外営業職として、石油関連の会社で約9年間勤務していました。海外への出張も多く、グローバルな環境で多くの学びがありましたが、会社が倒産してしまい、そのタイミングで自分のキャリアを変えるため、再び留学することを決意し、アメリカ・ロサンゼルスの大学院で経営学を学びました。

アメリカ留学はどのような経験でしたか?

柴田 アメリカでの生活は、私の生き方に大きな影響を与えてくれました。ロサンゼルスでの経験は、西海岸特有の自由な発想と起業家精神に触発される機会となりました。「自分自身でいること(Be Yourself)」の大切さを学び、自分のビジネス経験と音楽への情熱を掛け合わせることで、自分にしかできない価値を創り出したいと考えるようになりました。
コロナの影響もあり、卒業直後に日本に戻って起業する道を選び、それが後のgood record clubのサービスの始まりにつながります。

 

good record clubの誕生

最初からレコードに関連するサービスを考えていたんですか?

柴田 最初はダンス関連のビジネスを考えていましたが、いくつかのアイデアを検討した結果、音楽、特に商業化の「原点」とも言えるレコードに焦点を当てることにしました。
アメリカ留学中にデジタルストリーミングサービスが盛り上がる一方で、アナログレコードの魅力が再評価されて、Walmart(全米最大の小売チェーン)でも売られているほど広く世の中に浸透していることを感じました。そこで、日本でもレコードをもっと身近に感じてもらうサービスを提供するアイデアを考えていきました。レコードの市場が伸びているという側面ももちろんありますが、デジタルの浸透で人間性が損なわれてメンタルを病む人が多いという社会課題や、プライバシーやフィルターバブルといった問題に対して、リアルな世界に回帰できるアナログの魅力、中でも音楽という人間の本能的な悦びに根差した価値を提供することや、大量生産消費社会の中で長く良いものに時間と手間をかけ、自分のアイデンティティを確立し、文化を再循環させるという意義も大きいと考えました。

具体的なサービスのアイデアはどうやって考えましたか?

柴田 アメリカで、セレクトされた再発盤を毎月配布する「Vinyl Me, Please (VMP)」というレコードのサブスクリプションサービスが広まっているのをみて、リアルな人が選ぶ「キュレーション」へのニーズがあることを知りました。ただ、good record clubはVMPとは異なり、お客様へヒアリングを行うなどして、個人の嗜好に合わせた、よりパーソナライズされたアプローチを取り入れています。VMPはExclusiveなアイテムをつくり、レコードの限定性や「物」的な魅力を売りにしていると思います。それよりも、レコードと偶然に出会うワクワクした「体験」にフォーカスして、レコードというモノを介して、選ぶ過程の体験とともに記憶に残り、より人の顔が見えるオーガニックな関係性を感じられるサービスにしたいと思いました。

その背景には、お客様にとって新しい音楽体験を提供し、アルゴリズムに頼らない自分自身の感性を磨き、より豊かな音楽生活を楽しめるようにしたいという思いがあります。また、レコードに興味がある人にヒアリングをしていくと、お金と知識がハードルになっていることがわかりました。高価で買えない、選べないというのは昔も同じだと思いますが、当時「貸しレコード」が流行ったように、より気軽にレコードを楽しめるサービスがあれば、新しい層にも広がっていくと考えました。

それは興味深いですね。good record clubは、柴田さんのこれまでの経験や学びが結集したサービスなんですね。

柴田 そうですね。海外での新しい価値観との出会いや、音楽に没頭した原体験から、人生における音楽の旅を彩る出会い、「Life Sound」というのをコンセプトに、このサービスをつくりました。

 

good record clubのサービスの特徴とは

good record clubのサービスにはどのような特徴がありますか?

柴田 レコードのサブスクは、お客様に毎月おすすめのレコードを送るサービスです。また、オーディオ機器のサブスクでは、整備済みのヴィンテージ機器を毎月定額で手軽に楽しむことができます。
レコードのサブスクリプション、『シェアプラン』ではお客様の好みに合わせたLPレコードを毎月送り、お気に入りの作品は追加料金のお支払いでご購入頂けます。

その他の買い切りプランでは、ご希望の数量・予算などに応じてセレクトしたヴィンテージLPレコードをお送りしています。
オーディオ機器のサブスクは、まだレコード再生機材を持っていない方や、アップデートしたい方向けのサービスです。一括購入だけでなく、お客様がオーディオ機器を自宅で試し、気に入ったらそのまま購入できる、いわゆるレント・トゥ・オウン(借りてから買う)形式も可能です。具体的には、予算・設置場所・ブランドなどのご要望をお伺いした上でセットを提案し、月額定額で機器を試用していただき、契約期間終了後に最終的に機器を所有できる仕組みです。

初心者の方が1〜2万円程度の安い新品プレーヤーを買って、レコードの音の良さがわからず、聴かなくなったり、格安の中古品を購入して失敗される方も多いので、最初からつくりが良いものを安心して使い、自宅の環境で試して納得した状態で購入してほしいと思い、このような形でサービスを提供しています。

オーディオのラインナップについて教えてもらえますか?

柴田 good record clubのセレクションは、専門知識が豊富なハイエンドのオーディオ専門店と品揃えが豊富なハードオフなどの中古量販店の間に位置づけられると思います。エントリーセットの「苔 KOKE」にはアンプが不要なアクティブスピーカーを組み合わせ、月額5,000円(12ヶ月プラン)と、これからレコードをはじめてみたい初心者の方にも手が届く価格帯だと思います。

他にもオーディオセットのラインナップには予算に応じて「梅 UME」「竹 TAKE」「松 MATSU」のプランがあります。例えば、「梅 UME」のモデルセットは、例として、スピーカーにYAMAHA NS-10M、レコードプレーヤーにはTechnics SL-1200などいわゆる「名機」と呼ばれるものを組み合わせています。これらは、あくまでお客様が選びやすいようにセットで提案しているもので、既にお持ちの機器との組み合わせなど、ご要望に応じたカスタムメイドのプランも可能です。

レコードのジャンルはどのようなものがありますか?

柴田 レコードのラインナップは、ジャズやソウルなどのブラックミュージックが中心です。加えて、和もの(日本の音楽)やワールドミュージックも置いていますが、基本的にはアナログレコード全盛期(1990年代以前)の作品です。新譜よりも、当時の作品のほうがレコードならではの空気感や、「現在」から「過去」へより遠くへ旅するような感覚を楽しめると考えているためです。。ポップやロックはあまり取り扱っていません。

 

レコード好きへの新しい提案

good record clubでは、何か新しいサービスを考えていますか?

柴田 レコードでは、他のDJや個人店の目利きを活かしてセレクションの幅を増やしたいと考えています。レコード市のように色々なお店で選ぶような感覚で、多様なキュレーターのテイストを選べるようになれば、多様な衣食住を楽しむかのように、もっと充実した音楽生活が広がると思います。オーディオでは、 DJや音楽制作向けの機材セットの提供です。ユーザーはより気軽にアナログDJや音楽制作をはじめることができ、音楽を単に聴く体験から、より積極的に「音楽と遊ぶ」体験へと没頭していけたら良いと思います。
ターンテーブル、ミキサー、サンプラー等のセットの提供を通じて、お客様がレコードならではの手触り感や蒐集の愉しみを知り、音楽が、より深く人生の「遊び」になっていくと考えています。

つまり、good record clubは音楽の新しい楽しみ方を提案しているわけですね。

柴田 そうですね。私たちは、音楽が生み出す感動や人とのつながりを通じて、豊かで奥深い人生を送ることができると信じています。そのために、レコードというアナログの魅力を最大限に活かし、それを現代的な形で楽しんでいただきたいと考えています。

 

柴田さんのおすすめのレコード

最後に柴田さんのおすすめのレコード3枚を教えてください。

“幻想組曲” (Illusion Suite) / スタンリー・カウエル
スタンリー・カウエルはアメリカのジャズピアニストで、メロディーが凄く美しいと思っています。スピリチュアルジャズを代表するストラタ・イースト・レコードの創始者でもあり、こちらはECMレコードからリリースされています。A面の2曲目はパーカッションも入っていて、ダンスのショーケースでも使いました。

 

陽光 / 富樫雅彦&鈴木勲
これはジャズといえるのかちょっとわかりませんが、日本ジャズ界を代表するドラムとベース奏者のデュオ作品で、リズム演奏者だけで作られた珍しいレコードです。すごくトライバルな感じもありつつ、ワールドミュージックでかつ、東洋的な影響も感じられるレコードです。日本人でこんな音を作る人がいるんだなと驚いた作品でもあります。

 

デディケーション / ハービー・ハンコック・ソロ
これは、ハーバーハンコックが来日時の日本企画盤の作品で、B面のシンセで作られた『ノブ』という曲は他のアルバムには入っていない曲で、ピコピコとノイズがなっているテクノの走りのようなサウンドがめちゃくちゃかっこいい一曲です。セオ・パリッシュもよくプレイしている曲で、フロアで聴けたら最高です。

 

インタビュー終了後、実際にサービスを利用してみました!

取材終了後、シェアプラン(レコードのサブスクリプション)の申し込みを行いました。

まず柴田さんとLINEでのやり取りを行い、「グルーブがしっかり感じられるもの」「ファンクのレコード」「80年代のディスコも聞いてみたい」「デトロイト・テクノのDJがかけていそうな曲」でオーダーしました。

そして到着したレコードはこちら!!

 

アーチー・ベル、ヘッドハンターズのファンク系、ザ・グレイト・ジャズ・トリオと、ポール・ハンフリー等のドラムセッションのジャズ系、ハービー・ハンコックのディスコ作品とバラエティに富んだ作品を送ってくださいました。自分で選ばず提案されたものをレコードで楽しむのは、すごく新鮮な体験で、レコードの楽しさを再発見できたと思います。レコードを楽しみつつ、特に衝撃だったハービー・ハンコックの作品をベースに、次月は80年代のディスコ系を多めでオーダーし、次のレコードの到着を楽しみにまっている状態です。

 

まとめ

good record clubはレコード屋さんとの関係性がなくても、個々の音楽の好みに基づいてレコードを提案してくれるという画期的なサービス、忙しい日常生活の中で、レコード屋さんに足を運ぶ時間がない方や、地理的な制約により訪問が難しい方にも、レコード屋さんならではの体験をオンライン体験できる、他にはないサービスだと思いました。

特に、オーディオ機は、レコードの魅力を最大限に引き出すための重要な要素、まだレコードプレイヤーやオーディオ機器を全く持っていない方でも、『シェアプラン』『オーディオセット』同時に申し込むだけで、レコードの楽しみ方を学び、新たな音楽体験を始めることができます。

ぜひ一度、good record clubのサービスを利用して、レコードの世界への素晴らしい一歩を踏み出してみてください。

good record club
https://goodrecordclub.com/

店舗情報
https://recoya.net/ja/stores/good-record-club-by-shibaken-records/

 

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