レコ屋の店主の方へのインタビュー連載”レコ屋のヨモヤマ話”。
東武宇都宮駅から歩いて行ける場所にあるレコ屋「DX RECORDS」。
店内には、ロック、パンク、ジャズ、ソウル、ファンク、和モノ、レゲエ、ブルース、サントラなど、幅広いジャンルのレコードが並んでいます。
「レコードをモノとしてだけでなく、持っていた方の時間も含めて、大事にしたいんです」
そう話すのは店主の手塚さん。
今回は、手塚さんに、レコードとの出会い、DX RECORDSを始めたきっかけ、そしてお店で大切にしていることについて聞きました。
音楽やレコードに強く惹かれたきっかけを教えてください。
手塚さんもともと家で親がレコードを聴いていた、といった環境ではなかったんです。中学2年ぐらいのときに、兄がDJをやり始めて、家にターンテーブルはあったかな、くらい。それを見てすぐに影響を受けたわけではなくて。
当時は格闘技が好きだったんです。K-1(※1)ですね。格闘家の中でもアンディ・フグ選手がすごく好きで、彼の入場曲を聴きたいと思ったんです。
でも、今みたいにネットで調べてもすぐ分からなくて、TSUTAYAに行っても分からない。どこに行けば分かるんだろうと思って、レコ屋に行ったのがきっかけでした。
お店の人に「アンディ・フグの入場曲って分かりますか」と聞いたら、「これだよ」って渡されたのがレコードだったんです。
「いやいや、僕CDプレイヤーしかないし」と思ったんですけど、兄がターンテーブルを持っていたこともあり、その店主から「だいじ、だいじ!」って言われたので。それが人生で初めてのレコードでしたね。
(※1)K-1:1993年に創設された日本の立ち技打撃系格闘技イベント、その競技自体の総称。
そこから、レコードの世界に入っていったんですね。
子供心に、レコードってまず見た目として面白いじゃないですか。なんでこの盤から音が出るんだろう、みたいな。中学生の頃は、お小遣いでレコ屋に行き、高校生になるとバイトして、日払いで頂いたお金を持って、そのまま原付で買いに行くようなやつでした。
最初は、Queenを買って、そのあとBilly Joelを買ったり、Gilbert O’Sullivanを探したり。パンクも好きで、Sex PistolsやRamonesも。
情報源は、CMだったり、どこかで耳にした曲だったりしました。「この曲いいな」と思ったら、それをレコードで聴いてみたくなるんです。
今もそうですが、自分の琴線に触れる曲があるんですよ。なんかしみる曲というか、感動する曲というか。それをレコードで聴いてみたい、という感覚が強かったです。
実際に、同じ曲でもCDで聴いたときと、レコードで聴いたときの感じが違うなと思うようになりました。言葉にするのは難しいんですけど、レコードは体が反応する感覚があるんです。音がちゃんと体に来るというか、感動というほどきれいな言葉ではないかもしれませんが、やっぱりCDとは違うなと思いました。

なぜレコ屋を始めようと思ったんですか?
29歳ぐらいのときです。当時働いていた会社は良い会社だったんですけど、将来を考えたときに、自分のやりたいことをやらなくていいのかなと思ったんです。それで、「自分にはレコ屋しかない」と思ってしまったんです。
レコードはずっと好きでしたし、最悪、うまくいかなくても、好きなことを一回やってみようと思ってチャレンジしました。
今考えると怖いですね(笑)。
今の場所も「ここしかない」とあっという間に決めて、自分のレコードを販売することから始めました。
だから、今でも続いているのは奇跡だと思っています。本当にお客様のおかげです。今は若い人も来てくれますし、年配の方も来てくれます。下は4、5歳ぐらいの頃から通ってくれている子もいますし、上は80歳以上の方も来られます。
あと、どのレコ屋さんも似た状況だとは思いますが、最近は海外の方も多いです。英語は全然できないんですけど(笑)、レンタカーで海外の方が来ることもあります。
DX RECORDSで大切にしていることはありますか?
レコードを雑に扱いたくない、というのはすごくあります。モノとしてもそうですが、持っていた人が扱ってきた時間も含めて大事にしたいという気持ちです。
たまにいろんなメディアを見ていると、レコードを「ゴミ盤」といった表現をするときってあるじゃないですか。それが、僕はちょっと心が辛くて。。。
もちろん、値段がつきにくいものはあります。でも、それを持ってきた人にとっては、思い入れがあるものかもしれない。買取のときも、「古くてすみません」と言われることがあります。でも、できるだけちゃんと見たいと思っています。通常盤と見本盤の違いとか、細かいところもなるべく見ます。相手の立場になって考えたい、というのはありますね。
お客さんに対しても、レコードの扱いについて伝えているんですか?
たまにです(笑)。
お店の中でレコードをガンガン扱われると、やっぱり気になります。できれば丁寧に扱ってほしい。お客さんにも楽しくレコードを見てもらいたいし、レコード自体も大切に扱いたい。その両方ですね。
お客様に楽しく、という意味では、音響はこだわっています。
「こんな音で聴いたことがない」という体験が提供できるかもしれません。スピーカーも音色が違うものを使い分けています。
するどく音が来るスピーカーや、もう少し優しく聴こえるスピーカーが設置されていて、試聴されるジャンルや、店内でのお客さんと会話する場面など、みなさまの邪魔にならないように、その状況でスピーカーを変えたりします。

初心者にとっても、音の違いを体験できる場所になりそうです。
レコード針も20本ぐらいあります。針で音はめちゃくちゃ変わるんです。
たとえば、数千円の針と数万円の針では、全然違います。でも、高いものが絶対正解というより、人によって好きな音は違うんです。
プレイヤーも、普通ではあまり見ないようなものを使っています。アームが複数ついていたり、糸で回るプレイヤーだったり。オーディオが好きな人には、ちょっと変人だと思われるかもしれません(笑)。
ただ、見た目をきれいに整えるというより、出てくる音が良ければいいという考えです。
レコードって、ただ買うだけではなくて、聴き方で印象が変わるんです。針やスピーカーで音が変わることを知ると、もっと面白くなると思います。
もちろん、各々の住宅事情もありますし、再生装置を良くすることだけが正解だとは思っていません。ポータブルプレイヤーで聴く楽しさも、僕自身すごく好きです。
ただ、こういう楽しみ方もありますよ、ということを提案したいんです。実際に音の違いを経験してもらうことで、少しでも音楽を楽しむきっかけになったり、その手助けができたらうれしいですね。
お店では、そんな想いを伝えることに必死で、熱量が強くなりすぎないようには気をつけています。

お店として、これからどうしていきたいですか?
細々とでもいいので、愛される店でありたいです。
みんなの憩いの場というか、来た人が「楽しい時間だったな」と思って帰ってくれたら、それが一番うれしいですね。
レコードを買うだけじゃなくて、他愛もない会話をしたり、次に来たときに「あのときの話、覚えてますよ」みたいなことがあったり。そういうのが面白いんです。
バンド活動でのライブのときは、絶対楽しませたいという気持ちがあるんですが、お店でもそれは同じかもしれません。
オーディオのセッティングを頼まれたら、普通の業者ならここまでやらないだろうな、という範囲を心がけています。相手に喜んでもらうために、できることは最大限やりたいんです。
Recoya VIEW
DX RECORDSで印象的だったのは、手塚さんの「レコードをモノとしてだけでなく、持っていた方の時間も含めて、大事にしたい」という言葉でした。値段がつきやすいもの、つきにくいものはあっても、その一枚には誰かが聴いてきた時間がある。そんな前提でレコードと向き合っている姿勢が、手塚さんのおおらかな空気につながっているように感じました。
また、音響へのこだわりもDX RECORDSらしさのひとつです。針やスピーカー、プレイヤーによって音の印象が変わることを、難しい知識としてではなく「こういう楽しみ方もありますよ」と提案してくれる。高級な再生装置が正解という話ではなく、音楽の楽しみ方を少し広げてくれる場所なのだと思います。
DX RECORDSに訪ねる際は、気になる一枚を手に取って、手塚さんに音を鳴らしてもらってください。これまで何度も聴いた曲が、少し違って聴こえるかもしれません。