レコ屋の店主・店長の方へのインタビュー連載“レコ屋のヨモヤマ話”。
福岡市・春吉にあるレコ屋「Record Shop BAGISM」。
「今もかっこいい音楽が生まれ続けていることをたくさんの人に知ってほしい」
そう話すのは、現在BAGISMの店頭に立つ籔林さん。兵庫県の加古川市で音楽に触れはじめ、福岡のタワーレコードで働き、ライブハウスやDJイベントの現場に通いながら、音楽を届ける側へと少しずつ歩みを進めてきました。
今回は、籔林さんに音楽との出会い、BAGISMとの関わり、そして福岡でレコード店を続けていくことについて聞きました。

音楽に強く惹かれたきっかけを教えてください。
籔林さん小学生の頃からJ-POPは聴いていたんですけど、いろいろ聴き始めたのは中学生ぐらいからです。きっかけは、同級生やそのお兄さんでした。大学生くらいが聞いている洋楽などを友だち経由で知ることができたのが大きかったです。
その頃に聴いていたのは、Fall Out Boy、Sum 41、Green Dayみたいなパンク系と、The StrokesやArctic Monkeysみたいなインディーロック、オルタナ系の音楽でした。たしか、2010年前後だったと思います。当時は、CDやiPod、そしてサブスクへと音楽の聴き方が変わっていったときでしたね。
高校時代は邦楽のインディーズやロックもよく聴くように。バンドもしていたけど、聴くこと、話すこと、ライブに行くことが、少しずつ日常になっていきました。
大学では軽音サークルに入って、ライブも月に4回ぐらい見に行っていました。大学3年生ぐらいからは、タワーレコードでバイトを始めて、そこから、より新しく生まれてくる音楽にフォーカスするようになったのかなと思います。
メーカーさんから送られてくる新譜のインフォメーションを見て、気になるものを休憩時間に聴いたりしていました。海外のロックやポップ、ソウル、R&B、日本のインディーズ。どんどん新しいものが出てくるんですよね。
タワーレコードでは、4年ほど働いたんですが、日々、新譜の情報に触れ、気になる音楽を聴き、店頭でどう届けるかを考える。そこで、音楽を「買う」だけでなく「紹介する」「応援する」という感覚が育っていったと思います。


「紹介する」、「応援する」といった感覚が、自分の行動として変わった話はありますか?
それがまさにレコードだったと思います。当時、日本のインディーズバンドがレコードを出し始めていたんです。プレイヤーを持っていないのに、最初にレコードを買った記憶があります。
サブスクで聴けるなら、それでいい部分もあると思います。でも、活動している人たちに対して、「モノ」を買って応援したい気持ちがありました。CDだとパソコンに入れて終わりになってしまうこともあったので、レコードをかける体験の方が、自分にはしっくりきたんです。
最初は「買い出したら止まらなくなる」と思い、少し距離を置いていたんです。けれど、プレイヤーを買ってしまって、そこからは完全にタガが外れていきました笑
タワーレコードの店頭で働きながら、自分の欲しいレコードを自分で注文する。月に数枚ずつ、音楽との付き合い方がフィジカルなものへ変わっていきました。
そうやってタワーレコードで働いていた頃に、この店ができたんです。プレオープンの日、仕事の1時間休憩のあいだに、ごはんも食べずに自転車を飛ばして来ました。レコードを買って、当時の店長に「もし人を雇うことがあったら、雇ってください!」って言ったんです。初対面で。
あとから聞いたんですが、そのとき周りの人に店長が「やばいやつがきた」って言ってたそうです笑
それからは何度も通っていましたね。


そこまで来たくなる理由ってなんだったんですか?
自分がいつかやりたいレコ屋の像がBAGISMにあったんです。
お酒を飲みながら、音楽の話ができる。DJイベントがあり、ライブハウスとのつながりがあり、福岡で音楽を楽しむ人たちがふらっと集まる。店を通じて、人と人の関係が広がっていく。そんな自分が思っていたレコ屋像をBAGISMは、ほとんど満たしていました。
また、当時福岡には新譜のレコードを買える場所があまり多くない印象がありました。タワーレコードで買うか、自分で注文するか、ネットで買うか。だから棚を見た瞬間に感動したんです。
そういった想いが伝わったのか、前店長からバトンを受け取る形で、BAGISMに立つようになりました。実際に手伝いながら、仕入れのことも、イベントのことも、少しずつ見ながら覚えていきました。
前店長はパンクバンドの人だったので、DIY精神がありました。内装も自分たちでやっているし、「自分たちでできることは自分たちでやろう」という感じがあったんです。
何より、頑張りながら楽しんでいる姿が印象に残っています。自分もそうなりたいと思っています。

店づくりで大切にしていることはありますか。
福岡にも、すごくいろんな音楽を聴いている人、たくさんレコードを買っている人がいます。海外アーティストの来日公演を見に東京や大阪まで行く人もいる。そういう人たちに、福岡でも面白い場所があることを伝えたいです。
BAGISMでは、海外アーティストの福岡公演があるときに、そのアーティストのレコードを入荷したり、気になる人に声をかけて「一緒に見に行こう」と誘ったりすることもあります。福岡に海外アーティストが来る機会は、東京や大阪に比べると決して多くありません。だからこそ、その一回を店として盛り上げたい。そこは、BAGISMとしてやるべき活動なのかなと思っています。
最近では、ニュージーランドのバンドPhoebe Ringsの来日ツアーの福岡編を企画しました。BAGISMの店内だけで完結するのではなく、ライブハウスやDJイベント、福岡で活動するアーティストともつながりながら、街の中で音楽が動いていく。そのための小さなハブのような役割を担おうとしています。
また、新譜のレコードを扱うことはシンプルに、新しいものを追っていく面白さがあります。今まであった音楽の上に、新しいものが生まれている。アーティストの人間的な部分だったり、その時の環境だったり、レーベルが変わったり、そういうものも含めて追っていけるのが生々しいなと思うんです。
それに、今活動しているアーティストはライブが見られる。今の何かを得られることが、とても楽しいと思います。新譜には、いま現在の時間が刻まれています。音源を聴いて、レコードを買って、ライブを見に行って、また次の作品を待つ。アーティストが変化していく過程を、同じ時間の中で追いかけられる。それは、新譜ならではの楽しみです。


これからBAGISMをどうしていきたいですか。
ライブハウスやDJイベントで話す人の中には、ずっとバンドを続けている人や、ずっとDJを続けている人がいます。売れたい気持ちはもちろんみんなあると思いますが、好きなことを続けている楽しさとか、かっこよさをすごく感じるんです。生き方として、かっこいいなと思います。
BAGISMとしては、店内では弾き語りだったり、DJ以外のイベントも増やしていきたいです。外の箱を使わせてもらいながら、いろんなところでBAGISMとつながるような、楽しかったと思われる体験を作っていきたい。そこで自分も楽しんでいけるようなものにしたいです。
今も海外でも福岡でもかっこいい音楽が生まれ続けている。福岡にも、面白い音楽を求めている人がいる。ならば、その間に立つ場所をつくる。それをDIY精神で、周りに助けていただきながら、作っていきます。
Recoya VIEW
BAGISMを取材して印象に残ったのは、籔林さんが新譜レコードを「今、動いている音楽」として見ていること。レコードというと、過去の名盤や中古盤を掘る楽しさを思い浮かべる人も多いかもしれません。ただBAGISMでは、いま活動しているアーティストの変化や、その音楽が生まれている空気ごと楽しむことができます。
音源を聴き、レコードを買い、ライブへ行き、また次の作品を待つ。そうやって音楽を同じ時間の中で追いかけられることは、新譜レコードならではの魅力なんだなと思いました。そして、「売れる」だけではなく「続いていく」ことへの、静かなまなざしがあることも伝わりました。
春吉にあるBAGISMは、福岡で今鳴っている音楽と、これから出会うリスナーをつなぐ場所。店の棚からライブハウスへ、ライブハウスからまた店へ。そんな小さなサイクルが、福岡の音楽の景色を少しずつ面白くしていくのかもしれません。

