レコ屋の店主の方へのインタビュー連載”レコ屋のヨモヤマ話”。
大阪梅田駅からにぎやかな街をすこし歩き、中津駅近くにあるレコ屋「FunTricks Records」。
「人に対しても、音楽に対しても、気になったら確かめに行く」
と話す店主は、普段まわりから「NAKAMさん」と呼ばれている中村さん。大切にしているのは、自分が好きな曲、自分がおもしろいと思える音楽を置くこと。
今回は、NAKAMさんに、音楽との出会い、DJを始めた頃のこと、中津でお店を開いたきっかけ、そしてFunTricks Recordsで大切にしていることについて聞きました。
音楽やレコードに強く惹かれたきっかけを教えてください。
NAKAMさんいまは大阪なんですけど、生まれは埼玉なんです。あと特に子どもの頃から音楽に詳しかったわけではないんです。小学校、中学校、高校あたりは、普通にJ-POPを聴いていました。洋楽を聴き出したのも、大学に入ってからで、タイミングとしては他の方々よりもだいぶ遅いと思います。
音楽を買い出すよりも、クラブに行く方が先だったと思います。トレンドとかに感度の高い友人が大学にいて、彼に初めてクラブに連れて行ってもらって。そこでDJを見て、かっこいいな!やってみたいな!と思ったのが始まりですね。
当時通っていたのは、いわゆる派手な遊び場というより、音楽が好きな人たちが集まる場所。DJが、テクノやハウスといった音楽を通して、熱量ある空間をつくっていく姿に惹かれました。
DJは誰に教わったんですか。
独学です。最初は誰かに教えてもらったわけではないですね。機材も当時アルバイトで稼いだお金を奮発して買いました。どうせレコードも買うなら、いい音で聴きたいという気持ちもありましたし。
DJを始めて、どんどんレコードを買うことそのものが楽しくなっていきましたね。最初はロックやポップ、そこがやっぱり自分のルーツにはあると思います。そこは今もあまり変わっていないですね。
DJを始めて、ほんとに多くの人に会いましたし、積極的に会いに行きました。聴いたこともないような音楽をかける人とかたくさんいて。そういう人と会話させてもらって、お世話していただいて、そこから自分の知らない音楽を知っていきました。そういった活動は、いまもずっとその繰り返しです。
人に対しても、音楽に対しても、気になったら確かめに行く。そういった意識はいまでも大事にしています。
DJ自体は、いまは大阪・中津にあるNOON+CAFE(※1)でも、10年以上DJをさせていただいています。機会があったら、ぜひ来てください!
(※1)NOON + CAFE:大阪・中崎町の高架下にあるカフェ&イベントスペース。ライブやDJ、展示など多様なカルチャーが集まる大阪の音楽拠点です。

大阪中津でレコ屋を始めたのは、どんなタイミングだったのでしょうか。
10年前くらいに大阪にきたんですが、それをきっかけにレコ屋をひらいたわけではないんです。知り合いがいまのビルの1階で立ち飲み屋(※2)を始めるときに、「2階をつかってもいいよ」とたまたま声をかけてもらったことがきっかけでした。強いて言えば、自分がDJをやっているNOON + CAFEが近かったこともあります。
中津という街のことも自分の中では、ちゃんと理解できていなかったですね。ただ実際に中津でレコ屋を始めてからわかってきたことがたくさんあります。中津という街は、梅田から近い場所にありながら、少し歩くと空気が変わるんです。大きな駅前のにぎやかさから外れ、落ち着いた時間が流れている。実際にお店を開いてみると、その距離感も絶妙なんです。
(※2)マウントスギ:白と青のコントラストが映えるおしゃれな立ち飲み屋。カレー、お酒、おばんざいを組み合わせた新感覚の店で、マウントポテサラとベジタブルカレーがおすすめ。記事最後の写真はNAKAMさんとマウントスギの店主さん。仲良しな2人。
お店で大切にしていることはありますか。
自分がおもしろいと感じるモノを置きたいんです。知っているレコードで出会う安心感もあるけど、それ以上に「これは何だろう」と手が止まる楽しさがあると思っていて。
自分の感覚をごまかさないってことかなと思います。その感覚の積み重ねが、FunTricks Recordsらしさをつくっている気がします。
おもしろいと感じるモノですか?いい意味で胡散臭いところがあるものですかね。騒がしくて、ピコピコしていて、遊園地みたいな感じ。でも、ちゃんとポップである、みたいな。
きれいな曲ではなくて、すこし変、すこし怪しい、でもいい加減な感じではない。伝わりますか?笑
お店自体でいうと、カルチャーショップを目指しています。レコ屋ではあるんですけれど、レコード販売の「レコ屋」にはしたくはない。自分の感性にひっかかってもらって、共感してもらって、そういったお客さんがまた来てくれて。そんな空間、いわゆる音の社交場にしていきたいです。
実際に、お店で置かれているレコードを聴いて、初対面のお客さん同士でコミュニケーションが生まれる。そんな話をそばで聞いていても本当におもしろい。短期的にみたら効率悪いのかもしれないけど、中長期的に考えたら、ずっとつながっていられる関係をつくれているのかな?つくれていたらいいなと思っています。

これからFunTricks Recordsをどんなお店にしていきたいですか。
これまで大事にしてきたことを今後も継続して、力をいれていきたいですね。あまり奇をてらって、新しいことにチャレンジとかは考えてないです。いまお店から生まれている輪をどんどん広げていきたいです。
お店の名前にもある「FunTricks」も想いとしては、お店にきていただいたお客さんにおもしろい仕掛けをするぞ、という気持ちで名づけたんです。
自分がおもしろいと思ったものを置いているので、あまりジャンルは意識していません。そういったところも面白いかもしれません。強いて言えば、ジャンルは僕!となりますね笑
またレコードや音楽とは違いますが、初めてきてもらったお客さんにお店の中を見てもらった際に、毎回聞かれる質問があったりとか。レコードと同じくらい、情熱を注いでいるのが子どもで、娘の写真でつくったTシャツも着て仕事してたりしています。音楽以外にも他愛もないさりげない仕掛けをして、お客さんの反応を楽しみながら、日々がんばっています。
音楽に詳しい人だけじゃなくてもいいんです。実際、ぼくも家で音楽を聴くときは、いわゆるJ-POPを子どもとサブスクで聴いてたりするので。あまり構えずに、自然体でみなさんに来てもらえると嬉しいです。
Recoya VIEW
「人に対しても、音楽に対しても、気になったら確かめに行く」というNAKAMさんの言葉が、とても印象的でした。音楽を『自分の感覚で確かめていく』姿勢が、FunTricks Recordsの棚をつくっています。NAKAMさんセレクトに触れる際は、店内の棚「Outsider Music」をチェックしてください。
また、レコード販売だけの「レコ屋」ではなく、カルチャーショップであり、音の社交場にしていきたいという考えも、FunTricks Recordsらしさのひとつです。お店に並ぶレコードや音をきっかけに、お客さん同士の会話が生まれる。そんな関係性まで含めて、このお店の空気が作られているのだと思います。
中津という静かな街で、NAKAMさんの感性から楽しい仕掛けが生まれていく。少し怪しくて、でもちゃんとポップ。そんな1枚に出会いに、FunTricks Recordsに行ってみてください。