レコ屋の店主の方へのインタビュー連載”レコ屋のヨモヤマ話”。
愛知県名古屋市にあるレコ屋「SORC」。
店内には、レコードと古着が並んでいます。現在、店頭に立つのは店長の小島さん。オーナー・店主の小畑さんです。
今回は小島さんに、ファッションからレコードへとつながっていった経緯、そしてSORCで大切にしていることについて聞きました。オーナー・店主の小畑さんにも、店で過ごしてほしい時間について伺います。
音楽のきっかけを教えてください。
小島さん父親が家でレコードを聴いていたり、ラジオやCDでハードロックを聴いていたりしたので、音楽そのものは身近にありました。ただ、子どもの頃から自分が強く興味を持っていたかというと、そうではなかったですね。聴きなじみはあった、という感じです。
自分の人生に音楽が入ってきたのは、中学生の頃です。文化祭で先輩がバンドをやっているのを見て、「バンドをやろう」と思ったんです。軽音部があったわけではなくて、野球部をやりながら、文化祭のためにバンドをやるような感じでした。
当時はBUMP OF CHICKEN、RADWIMPS、ELLEGARDENあたりを聴いていました。そこからGreen Dayを聴き出して、Linkin Parkとか、アメリカの2000年代のロックやメロコア(※1)の方に一人で入っていきました。
(※1)メロコア:メロディック・ハードコアの略称。パンク/ハードコアの疾走感に、親しみやすいメロディーを組み合わせたロックの一ジャンル。

ファッションと音楽は、どうつながっていったんですか。
学生の頃は、音楽よりもファッションの方が意識としては大きかったんです。大学では、名古屋のセレクトショップでアルバイトしていて、そこからファッションの仕事に入っていった感じです。
20歳前後の頃、モードっぽいファッションに興味を持った時期がありました。そのときに『GAP PRESS』(※2)という、コレクションのルックが載っている雑誌で、1ページだけ「これだ」と思うものがありました。それがHedi Slimane(※3)が手がけていたSaint Laurentのコレクションでした。
そこからHedi Slimaneのことを調べていくと、彼がすごくロックに影響を受けていることが分かってきて。自分自身も細かったので、彼が作る細いシルエットの服にもすごく惹かれました。
あと、彼はランウェイにモデルではなく、バンドマンを起用することがあったんです。しかも、まだそこまで名前が出ていないようなインディーバンドの人たちを歩かせていました。その彼らはよく古着を着ていたんです。ダサいんだけどかっこいい、みたいな感覚があって。そこからは古着にのめりこんでいくんですが、それと同時に、SWIM DEEPというイギリスのバンドに出会ったんです。
彼らの「She Changes the Weather」という曲があるんですけど、それまでメロコアやハードなロックを聴いていた自分にとっては衝撃でした。ロックってこういう浮遊感があってもいいんだ、ドリーミーというか、本当に当時の自分にとっては初めての感覚でした。
(※2)GAP PRESS:ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリ、東京などの最新コレクションを、豊富な写真とともに紹介するファッション誌。
(※3)Hedi Slimane:フランス出身のファッションデザイナー、写真家。2012年から2016年までSaint Laurentのクリエイティブ・ディレクターを務めた。
レコードを買い始めたのも、その頃ですか。
そうです、まさに最初に自分で買ったレコードは、SWIM DEEPの作品です。彼らのレコードがあると知って、ちょうど家にレコードプレーヤーもあったので、買ってみようと思ったんです。
タワーレコードや中古レコード店に行って買うというより、オフィシャルサイトから海外通販で買いました。レコードを購入した頃は、サイズもよく分かっていなくて、シングル盤が届いたときに「なんか小さいのが来たな」と思ったこともありました。レコードを集めようというより、好きなバンドの作品があるなら買ってみよう、という感覚でしたね。
そんな折にHediがSaint Laurentを辞めて、ファッションに対する熱が少し落ち着いて。その分、もっとインディーズの音楽を聴くようになったんです。古着を買うことよりも、音楽を聴くことの方が生活の中心になっていました。
それで、レコード屋さんってかっこいいな、レコード屋で働きたいなと思うようになったんです。名古屋でいろいろレコード屋を探して、SORCを最初に訪ねたとき、店の雰囲気がすごく良かったんです。お客さんとの距離も近くて、ああ、いいなと思いました。
それで、数日後にもう一回来ました。そこでオーナーの小畑さんに、レコード屋をやってみたいんです、将来的には古着とレコードを一緒にやりたいんです、と直談判しました。
すると小畑さんが、「じゃあ、そこの一角で古着を置いて売ってみたら」と言ってくれて。そんなにすぐに事が進むことがあるのか、と思いました(笑)。

SORCの特徴について教えてください。
SORCには、ちゃんとした環境でレコードをしっかり聴いてもらえる空間があるということです。ヘッドホンで確認するというより、音楽空間として、ちゃんとレコードを体感してもらえる。自宅ではこんな大きなスピーカーで聴けないかもしれないけれど、レコードにはこれだけの実力があるということを知ってもらいたいんです。
SORCでは、高額な盤も置いていますが、そういうものこそ、売れてしまう前に一度聴いてほしい。人生の中で聴く機会がないかもしれないレコードもあるので。高額な盤もお店で聴けるんです。もちろん、普段聴くような小さなスピーカーやポータブルプレーヤーで聴いてもいいんです。でも、レコードにはこういう音も出せるんだと知った上で、持って帰ってもらえたらうれしいです。
オーナー・店主の小畑さんにも、SORCについて聞きました。
小畑さん当店は繁華街の真ん中にある店ではないので、わざわざ名古屋駅から足を伸ばして来てもらうことになります。だから、来たけど何もなかったな、という気持ちでは帰ってほしくないんです。
駅前のお店よりは、お客さんが少ないことも、見方を変えれば、メリットだとも思っています。ゆっくりお茶を飲んでもらって、いい空間でレコードを聴いて、古着も試着してもらえる。何も買わなかったとしても、「面白かったな、また来よう」と思ってもらえる時間にしたいんです。
またレコードも古着も、誰かが持っていたものを、また誰かが楽しむもの。中古でいいものがたくさんあるなら、それを大事に楽しむ。モノを大事に扱う、そういう感覚も自然と伝わればうれしいです。

これからSORCをどんな場所にしていきたいですか。
自分自身が体験したファッションから音楽という流れは、大事にしているひとつです。
たとえば、バンドTシャツを手に取った人が、そのバンドを知らなかったとしても、僕は別にいいと思っています。ただ、お客様の買うという行為があるなら、「この音楽も聴いてみてね」と伝えることはできる。そんな気持ちで日々、お店に立っています。知らないバンドのTシャツから、彼らの音楽を聴いていく流れは、自分だからできることだと思っています。
またSORCなら、レコードもあるので、実際に音をかけることができます。古着から音楽に入ることもあるし、音楽から服に入ることもある。そこは、この店だからできることだと思います。これまで以上に、そんなお店のスタイルは続けていきたいです。そのうえで、ただ物を売るだけの場所ではない形にしていきたいと思っています。
たとえば、店内の見せ方や棚の置き方も、自分の中では大事にしているところです。古着を置き始めたときも、ただ箱に入れて並べるというより、ちゃんと見え方を作りたいという気持ちがありました。自分が見てきたセレクトショップや、海外のお店の雰囲気の影響を受けていて、お店を改装したときも、ライブができるような小さなステージのような場所を作ってもらったんです。
実際に、古着屋を始めて5周年のときに、店に来てくれているお客さんのバンドに、店内でライブをやってもらいました。あれは、自分の中でも一つ形になった感じがありましたね。
最近もイギリスに行って、スコットランド、ニューカッスル、マンチェスター、リバプール、ロンドン、ブリストルなどを回って、レコード屋や古着屋を見てきました。どんな人が、どんなふうにお金を使っているのか。どういう雰囲気の店があるのか。そういうものは、すぐには言葉にできなくても、何かしらのヒントになります。現地で感じた空気や、そこで見たアイデアを、少しずつSORCにもつなげていきたいです。
レコードも古着も、ただ買って終わりではなくて、そこから人が集まったり、音楽を聴いたり、会話が生まれたりするものだと思っています。だからSORCも、物を買うだけの場所というより、好きなものをきっかけに人が集まる場所にしていけたらいいですね。
Recoya VIEW
ファッションを入り口に、まだ知らない音楽の世界へ。あるいは、レコードから古着へも。SORCには、レコードと古着を別々のものにせず、ひとつのカルチャーとして行き来できる面白さをつくろうとしています。
大きなスピーカーで一枚のレコードにじっくり耳を傾け、古着を試着しながら会話をする。買い物だけで終わらない時間を大切にする姿勢は、店長の小島さんとオーナー・店主の小畑さんの言葉の両方から伝わりました
“ダサいんだけどかっこいい”という感覚から広がった小島さんの探究心が、人と音楽、人と服をつなぐ場所へ育てようとされている。SORCは、好きなものをきっかけに次の出会いが生まれていきます。